桐島、部活やめるってよ|学校内の微妙な人間関係・雰囲気を細部まで描いた青春群像劇

学校の教室

このページでピックアップするのは、朝井リョウさん原作で吉田 大八さんがメガホンをとった、映画「桐島、部活やめるってよ」です。

超有名作品とは知りながらもなぜか今まで手が伸びなかったのですが、先日ふと時間ができた時に観たら、もう傑作中の傑作でした!

揺れ動きやすい高校生の心理や、学校という空間のリアルさを、豪華なキャスト陣と斬新な演出によって見事に表現されていましたね。

国内のあらゆる賞を総なめにしたというのも、うなずける内容でした。

それではここからは「桐島、部活やめるってよ」の見どころや、私なりの見解・感想を述べていきたいと思います。

桐島、部活やめるってよのあらすじ

バレーボール部のキャプテンであり、学園のスーパースターである桐島が部活を辞めるという噂が広がった、金曜日~火曜日までの学校の風景を描いた青春群像劇。

たかが一生徒が退部するだけの話だが、校内のカリスマ・理想である桐島となれば話は別です。

部活、クラスの雰囲気、友人関係、恋人関係など幅広い人間に影響を与え、その影響は本来なら全く関係のない学内ヒエラルキーの下位層にまで波紋していきます。

いつも通りの日常が徐々に変化していくことで現れる、本音と建前・学校内での微妙な人間関係を、見事に切り取った傑作映画です。

「桐島、部活やめるってよ」のここが凄い!きわめて個人的な見解

映画「桐島、部活やめるってよ」は、変化していく日常を淡々と描いていて、これといって特に大きな出来事や事件が起きるわけではありません。

観る方によってはあまり理解できず、退屈に感じることもあるかもしれません。

なので以下ではまだ観たことがない人に向けて、本作を2回とおしで観た私の個人的な見解や、素晴らしいと思ったポイントを述べていきたいと思います。

主人公のはずの桐島が一切出てこない!

この作品は、「他にはない斬新なポイント」が2つあると個人的に思っています。

その1つ目が、「主人公であるはずの桐島が、作中全く出てこない」という点です。

物語の終盤に「らしき人物」が一瞬だけ映ることはありましたが、それも桐島かどうかは明かされておらず、完全に主人公不在のままで物語が展開されていくのです。

桐島のパーソナリティや周囲からの評価など主だった情報は、その他の登場人物が語ることによって描写されています。

バレー部のエースで県選抜にも選ばれているのに、勉強もできて文武両道。おまけに学校一の美女とも付き合っている。

このような情報から桐島がどんな人間かは大まかにイメージできるのですが、その先の細部は、観る側がイメージして膨らませるしかありません。

桐島は一切出てこないからですね、これはもう仕方ありません。

なにより桐島が出ないことによって、「なんで出ないんだよ!」「いつ出てくるんだ?」という疑問やもどかしさが募ります。

不在の中でドンドン話が進んでいくというのは、見ている側にとっては不安ですが、これこそが制作側のハッキリした狙いであり、とても効果的な演出だと感じました。

同シーンのリピートによって、いろんな生徒目線での変化を知ることができる!

先に挙げた他とは違う2つ目のポイントが、「同じシーンを違う登場人物の目線で何回も繰り返している点」です。

具体的には、桐島がバレー部を退部することが学校中に広がった金曜日のエピソードが、視点となる人物を変更したり、角度を少しだけ変えて何度もリピートされるのです。

これによって、学校のスーパースターである桐島が部活を辞めるということが、如何に周りの人間に影響を与えることなのかを、より詳細に表現することに成功しています。

桐島の補欠だった風助やバレー部の面々、彼女である梨紗とその友人たちが影響を受けるのは当然。

そしてそれだけなく、桐島と学校が一緒という以外ほとんど関係ない、ヒエラルキー下位の生徒にまで、その影響が及んでしまうのですね。

この繰り返しの中で一番好感が持てたのは、吹奏楽部部長の亜矢の視点ですね。

亜矢は密かに思いを寄せている桐島の親友である宏樹を眺めるため、毎日放課後の屋上でサックスの練習を日課としている女子生徒です。

ですが桐島が退部したことで、宏樹たちが放課後残る必要がなくなってしまい、結果として亜矢の日課も意味がなくなり、それによってさらに傷つくような出来事が起こってしまうのです。

この亜矢に対してなぜ好感を持ったのかですが、実はこれと似たような経験を高校の時に私もしていたからです。

というのも当時の私はある陸上部の女子を好きになり、サッカー部だった私はわざとボールを陸上部の方に蹴って近づくという、結構気持ち悪いことを日課としていましたw

ですがその子がイケメンな先輩と付き合うことになって、ある日陸上部を辞めてしまうんですね。

私にもそんな切ない経験があったので、亜矢の気持ちは大いに分かりますw

なにはともあれこの撮り方によって、いろいろな生徒視点での心の揺れや日常の変化を、つぶさに観察することができるようになっているのは、この映画の秀逸な点だと思いますね。

今をときめく豪華なキャスト陣による見事な演技!

「桐島、部活やめるってよ」は2012年に映画化された作品なので、その当時は主演の神木 隆之介さん以外は期待の新人という感じでしたが、

・東出 昌大
・橋本 愛
・松岡 茉優
・山本美月

今振り返ってみると主役級の俳優だらけで、ものすごい豪華なキャストが勢揃いしています。

特にモデル上がりの東出さんと山本さんはこの作品で映画デビューし、その後のキャリアを踏んでいくことになったとのこと。

個人的に神木 隆之介さんは、子役の時からチェックしている大好きな俳優で、今作でもオタクな映画部部長の前田という役を見事に演じきっています。

中でも良かったが、橋本 愛さん演じるクラスメイトのかすみと、映画館でバッタリ合ってぎこちない会話をするシーンですね。

ベンチの横に座る勇気はなく立ったまま、しかも共通して話すことがないから映画の話を振るけども、かすみとは映画に関して温度差があって全然盛り上がらない。

観てる方はちょっと痛々しい気持ちになるぐらいなのですが、それでも密かに思いを寄せるかすみと少し喋れたことに、嬉しそうな感じの前田が可愛かったですね。

そして今作の中で一番素晴らしい演技をしていると思ったのが、沙奈役の松岡 茉優さんです。

この沙奈は校内ヒエラルキー上位にいる4人グループの1人であり、東出さん演じる宏樹の彼女で、学校一の美女である梨紗とは一番親しい友達というポジションです。

ステータスやブランドを大事にしていて、自分より格上の梨紗や宏樹には良い顔をし、その他の人間には明らかに見下した言動をとる腹の立つ女子です。

これがもう、存在感抜群!

本来ならドラえもんでいうスネ夫ポジションですが、ジャイアンに当たる梨紗を完全に喰っていましたし、彼女には終始イライラさせられっぱなしでしたねw

そんな感じで、今をときめく豪華キャスト陣の素晴らしい演技が見れるのも、本作の素晴らしい点だと思います。

自分が学生だった頃を思い出すぐらい、高校生の強烈なリアルが描かれている!

最後に4つめのポイントですが、「学校生活をおくる高校生のリアルさ」をしっかりと表現している点かなと思います。

学校内にハッキリと存在するヒエラルキーや、それにまつわる微妙な人間関係が、観ていて少し気持ち悪くなるぐらい強烈に描かれているんです。

具体的には、

  • やりたいことが見つけられず、放課後ダラダラと何をするわけでもない帰宅部たち
  • 制服を崩して自分なりに着こなしているリア充たち
  • クラスの隅の方で雑誌を囲みながら、楽しそうに談笑しているオタク君
  • そのオタク君たちを見て笑っている、ヒエラルキー上位の女子たち
  • その上位グループから弾かれないよう、常に空気を読んで立ち振る舞う女子生徒
  • 文句があっても、自分たちより目立つ存在には面と向かって何もいえない文化部の面々
  • 声が大きく、やたらと熱い筋肉系男子
  • 部員の意見よりも、自分がやりたいことを優先して押し付けてくる部活の顧問

こんな感じなのですが、どうでしょうか?

私なんかは自分の学生時代とリンクさせて、「こういう奴いたな~」とか「自分も似たような経験したわ」ということがたくさんありましたね。

中でもバレー部員の風助なんかは、中学・高校の頃の自分の立ち位置にとても近い存在でした。

この風助はいつも努力しているけど補欠で、試合では失敗を繰り返してしまうスポーツ部員です。

万年ベンチを温めていた私も、ある日突然レギュラーの1人が幽霊部員になったことでポジションを勝ち取った経験があるので、風助のことを他人事とは思えなかったですね。

このように本音と建て前、距離感、揺れる心の細部まで、学校という閉鎖的な空間で否が応でも共同生活を強いられる高校生のリアルさがこの映画にはありました。

桐島、部活やめるってよのまとめ

といことで、「桐島、部活やめるってよ」について思うままに書きました。

実際のところあまりにも有名な映画なので、今さら観てもしょうがないと思っていましたが、「なんで観なかったんだ・・・」と後悔するぐらい良かったですね。

ストーリー展開も秀逸ですし、撮り方やカット割りにもかなりこだわっているので、映像作品としても素晴らしいです。

またおすすめポイントには挙げなかったですが、教室・体育館・グラウンド・放課後など当時の空気感を思い出し、懐かしい気持ちに浸れる映画でもありました。

とにかく私の中では、邦画で歴代トップ10に入るぐらい素晴らしい作品でしたし、まだ観ていないという方には、自信を持っておすすめします。