サッカー漫画といえば、みなさん何を思い浮かべるでしょうか?
「キャプテン翼?」、「ファンタジスタ?」、「シュート?」、そのどれもが名作に間違いありませんが、今一番面白いサッカー漫画となると、これは「アオアシ」といわざるをえません。
ありそうでなかった設定・ストーリー、いろんな意味でリアルなサッカーの描写は、明らかに他の作品とは一線を画しています。
小・中・高校と10年間のサッカー経験者で、あらゆるサッカー漫画を読みつくしてきた私が、そんなアオアシの魅力について語ります。
アオアシのあらすじ
アオアシの主人公である青井 葦人は、中学まで愛媛のどかなかな街で、あまり深く考えない普通のサッカーをやっていました。
たまたま試合を見ていた福田達也に声をかけられたことがきっかけで、セレクションを受け、東京エスペリオンのユースチームに入団が決定。
周りはさらに下のジュニアユース(中学生年代)からプロを目指して争っている、サッカーの超エリート集団ばかり。
基本的なサッカーの技術もまるで違えば、小さいころからエスペリオンが掲げるモダンな戦術を徹底的に叩き込まれている選手ばかりです。
そんな中にポッと入った葦人は、当然ながら様々な壁にぶつかりますが、凄まじい成長スピードによってドンドン乗り越えていきます。
葦人は最終目標であるプロとなり、さらにその先の世界に行くことができるのか?
読み始めたら決して目が離せない、リアルで熱いサッカー青春物語。
サッカー通も納得の面白さ!アオアシの他にはない魅力について
アオアシは今も「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中で、話が進むにつれてドンドン面白くなっているサッカー漫画です。
「なぜアオアシはこんなに面白いのか?」について考えると、1話ごとに必ず見どころがあるのも大きな理由だと思います。
ですがそれ以上に、他作品にはない設定やアオアシにしかない独自の魅力があると私は思っていて、そのポイントをいくつか述べていきます。
プロの下部組織であるユースチームが舞台となっている!
サッカー漫画といえば、高校生で冬の全国大会・選手権を目指す青春ストーリーといのが王道ですよね。
ですがアオアシでの舞台の中心は、「東京シティ・エスペリオンFC」いう架空のプロサッカーチームのユースチームなのです。
このユースチームというのは、「アカデミー」ともいわれるプロクラブの下部組織に当たり、いわばプロサッカー選手の養成所みたいなところです。
ここがまず新しいというか、今までありそうでなかった設定ですよね。
そして実際にも、Jリーグのガンバ大阪のユースチームなんかは、
・稲本 潤一
・宮本 恒靖
・曽ヶ端 準
・橋本 英郎
・宇佐美 貴史
・井手口 陽介
・堂安 律
などプロのJリーガーはもちろん、数多くの日本代表を輩出している名門アカデミーとして有名です。
そしてこのユースチームは、雑誌やテレビなどでとりあげられることはほとんどなく、一般的にどんなところなのかはあまり知られていません。
そこでアオアシですが、育成現場であるユースチームの舞台裏まで、しっかりと描かれています。
具体例をいくつか挙げれば、
- ユース生はチームと提携している高校に入学する
- チームの寮に入り、部屋は2人1組
- 自由にウェイトトレーニングができるジム完備
- 食事は好きなものをとることができる、ビュッフェ形式の食堂がある
- ユニフォームや練習着は出しておけば、キレイにクリーニングして届けてくれる
- プロのトップチーム同様、整備された専用グラウンドで練習ができる
- 監督以外にも、複数のコーチ(ヘッドコーチやGKコーチなど)がいる
- プロではないユース生も、写真撮影をしてチームの会報誌に載る
などなど、サッカーに集中できる環境が整えられていることが分かり、これらユースの内部のことは通常では知りえないことですよね。
またユースが掲げるサッカーも、普通の部活とは全く違います。
これはたとえば高校サッカーなら、試合に勝つことや全国大会に出場することが目標であり、毎日遅くまで練習して、チーム一丸となって試合に臨みます。
これに対してプロの養成機関であるユースチームなのですが、選手側はあくまでも自分がプロになるため、そして運営側は優秀な選手を1軍におくるために存在する場所なのです。
特にアオアシの舞台である東京エスペリオンは、「サッカーIQ」や「個人戦術」が重要視されており、部活サッカーにあるような精神論・根性論のサッカーとは180度異なるのです。
このような点が、部活サッカーしか知らない私にはとても新鮮ですし、それらがストーリー仕立てになっているので、否が応にも引き込まれてしまうのです。
主人公のポジションがサイドバック
サッカー漫画の主人公といえば、FWでエースストライカーもしくは、MFでテクニックにあふれるゲームメーカーというのが定番ですよね。
漫画的な描写をする上でも、一番盛り上がるゴールシーンに近いポジションに主人公をおくのは妥当ですし、現実のサッカーにおいても花形のポジションです。
ですがアオアシの主人公である葦人のポジションは「サイドバック」で、このポジションは相手の攻撃から自陣を守るDFです。
実は私も現役の頃はサイドバックをやっていたのでよく知っているのですが、運動量が多くてしんどいのに、報われることが少ない地味なポジションなんですね。
今では日本代表でも内田 篤人や長友 佑都のようなタレントがでてきたからか、サイドバックが注目される機会も多くなりましたが、私が現役のころなどは一番下手な人がやるポジションでしたしねw
葦人も中学生までは自分がゴールを決めたい自己中心的なFWで、エスペリオンにもFWとして入団しますが、福田監督にサイドバックへとポジションをコンバートさせられます。
しかも一時的なポジション変更ではなく、永久的にサイドバック。
そもそも福田監督は葦人のピッチ全体を俯瞰する能力を見て、最初からサイドバックとして起用する構想を持って入団させていたのです。
FWからサイドバックにコンバートというのは、プロレベルでも実際に結構あることですが、サッカー漫画で主人公が地味なサイドバックをやるという展開は、今まで見たことがありません。
この現実的な設定こそが、アオアシの醍醐味の1つでしょう。
さらに葦人はプロで通用するような身体能力もなければ、足元の技術もいまいちなのですが、グラウンド全体を俯瞰できるほど広い視野と、味方と相手が次にどう動くかが分かるという特別な能力を持っています。
この能力と的確なコーチングによって、見方を動かしながら攻守にわたってゲームメイクしていくのです。
ただでさえ、玄人好みで奥深いサイドバックというポジションに主人公を置くだけでなく、「司令塔型のサイドバック」という新しい発想。
ハッキリいって、面白くないわけがありません。
細かい部分までリアルなサッカーを表現している!
アオアシではスポーツライターの上野 直彦さんが、アドバイザー的な役割として取材・原案協力しています。
また何かで読んだのですが、作者の小林 勇吾さん自身もJユースに通って、かなり綿密な取材をしているとのこと。
それもあってか、アオアシはとてもリアリティのある現実的なサッカー漫画になっています。
たとえば、ポジショニングやボールの運び方から味方のプレーを意図する、3人でトライアングルを形成しながらパスを回していく、パスを受ける前に首を振って周囲の状況を把握しておくなど。
どれもサッカー経験者の人なら知っている・聞いたことがあることで、実際のサッカーの試合でも重要となる、リアルなプレーがたくさん描かれています。
またそれらのプレーに対して、図解入りで親切な説明がされていたりするので、サッカーが分からない人でも問題なく理解できるようになっています。
さらにアオアシの凄いところは、サッカー選手が持つ心理や、心の動き方などにも焦点を当てて、細かく表現している点です。
たとえば、ずっとノーゴールが続いているFWの橘が古巣と対戦するとなった時に、「次の試合は自分を出さないでくれ」と監督に直訴するシーンがあります。
これかなりリアルです。
というのもFWというポジションは、スランプに陥って点が決められなくなると、とことんゴールできないようになることがよくあるんです。
悩むがゆえに無理にあがいてしまい、信じられないミスを連発するなど、これはユースや部活サッカーに限らず、プロや代表レベルの選手にも起こることですね。
他にもセレクションの紅白試合で、現ユース生に圧倒的な力の差を見せられた時、葦人以外のセレクション生は試合中にも関わらず、完全に心が折れてしまうシーンがあります。
これもあるあるで、サッカーやっていた人なら1度は経験したことがあると思いますね。
実力差がありすぎて自分たちのプレーが何も通用せず、圧倒的なスコア差をつけられて、さらに残り時間がまだ20分近くあるとか。。。
「お願いだから自分の所にボールがこないでくれ」、と祈りながらプレーしたことありますよ。
このようにアオアシでは、非現実的なスーパープレーで都合よく勝つとかではなく、実際のサッカーでも起こりえることを、リアルに細かく描いている点が素晴らしいと思います。
王道の青春スポ根要素も、しっかりと盛り込まれている!
アオアシは登場キャラたちの人間関係や、しっかりとしたストーリーの元で構成されているので、いわゆる「スポ根青春漫画」としても十分に面白い作品です。
具体的には、
- 卒業式の日を待たずに黙って東京へ行こうとする葦人に対して、授業を抜け出して駅まで見送りに行くサッカー部
- エスぺリオンのセレクションを受ける葦人に、溜めたお金を「これやるよ」といってサラッと渡す兄
- 「サッカーにあんたを取られるみたい」とつぶやきながらも、笑いながら黙って見送る母親
- 基礎技術が1人だけできていない葦人に、ぶっきらぼうながらも付き合ってくれる同室の富樫、同じセレクション上がりの橘と大友
などのように、胸が熱くなるような感動シーン・友情シーンがたくさんあります。
その中でも単行本3巻に収録されている、葦人と母親とのエピソードはかなりヤバいです。!
これは愛媛から上京する葦人に、20万円が入っている預金通帳と新品のスパイクが入っている小包が手渡されます。
それ以前の話で、葦人の家庭は金銭的に余裕がないことが描かれているので、頑張ってこれらを用意したというのがまず泣けます。
そしてそこには母親からの手紙も入っており、「サッカーが下手だろうが上手だろうが、あんたはわたしの誇り」という内容が書いてあり、
母親の温かくて優しい気持ちに葦人は涙し、プロになってお金を稼ぎ「楽させてあげたい!」という決意を新たにするのです。
大好きな作品なので何回も読みなおしていますが、毎回このシーンにはウルっとさせられてしまいますね。
このようにアオアシは育成ということをテーマに、サッカーだけでなく人間として成長していく姿が描かれているんですね。
さらには恋愛要素もあったりで、葦人と福田監督の義理の娘である福田 花とは、おそらく好き同志にも関わらず、お互い素直になれない関係が続いています。
そこにエスペリオンの親会社の社長令嬢である杏里も、葦人のことが気になるあまり、花には冷たく対応するなど、これがまた微妙な三角関係なんですよねw
こんな感じでアオアシには、甘酸っぱい青春要素もたっぷりと詰め込まれているので、サッカー部分を省いたとしても、十分に熱くなれる・楽しめる作品だと思います。
アオアシのまとめ
アオアシについていろいろと書いてきましたが、まだまだここには載せられないぐらい見どころが本当にたくさんある漫画です!
以前までは、「ジャイアントキリング」という作品が私的サッカー漫画1位でしたが、今は断然アオアシ。
サッカーという枠を外してスポーツ漫画のジャンルでも、「スラムダンク」や「メジャー」など、レジェンド級の作品と肩を並べるぐらいかもしれません。
最初は嫌がっていたのに、サイドバックとしてドンドン成長していく葦人の姿は、自分がやっていたポジションでもあるので、誇らしくもあり羨ましくもありますね。
今なお進化中なのでプロはもちろん、ゆくゆくは日本代表になんてこともあるかもしれません。
とにかくサッカー好きな人もそうでない人も納得できる内容ですし、心の底からおすすめできるサッカー漫画に間違いありません!